魔女剣士ハルカ
な…な…なんと舞方雅人様から10/17の悪堕ちカルタイラストを題材にしたSSを頂きました!
それではSSは追記からどうぞ↓
『魔女剣士ハルカ』
『クククク・・・このカプセルに入れられたお前は、これより洗礼を受けて我が教団のしもべとなるのだ。ククククク・・・』
『くっ、あなたの思い通りになんかならないわ! 私の中には熱い正義の心があるの。邪教のしもべになどなるものですか!』
くぅ・・・
そうそう、そう簡単には堕ちないって言わせないとねー。
このあとのギャップが際立たないもんね。
私はテキストソフトにキャラのセリフを書き込んでいく。
さあ、ここからよー。
しっかり悪に染まってもらわなきゃねー。
『クククク・・・無駄なことだ。お前にいかに正義の心が燃え盛ろうと、このカプセルによる洗礼を受ければ、お前の心は邪悪な魔女と化し、我が教団のために働くようになるのだ。クックククク・・・』
ローブ姿のザルグルは、カプセルの中のイリアナにそういうと・・・カプセルの脇にある・・・
スイッチを・・・押・・・し・・・た・・・と・・・
キーボードをたたきながら、私はシーンを脳裏に描く。
私の中では、今まさにイリアナを閉じ込めたカプセルが、イリアナに向かって洗脳波を浴びせかける瞬間なのだ。
くぅ・・・
いいよねぇ・・・
洗脳カプセル。
最高だよねぇ。
と、机の横に置いてある携帯電話が鳴る。
あ、彩子(あやこ)ちゃんからだ。
私はすぐに携帯を取り、電話に出た。
『ヤホー、こんばんは。調子はどう?』
「あ、こんばんはー。うん、まあまあだよ。今ちょうどイリアナの洗脳シーン書いてたところ」
『おー! それはそれはいいところだねぇ。しっかり悪堕ちさせてやんなさいねー』
電話の向こうで彩子ちゃんが喜んでる。
彩子ちゃんも悪堕ちが大好きだからねぇ。
「うんうん、当然でしょ。イリアナにはすっごくきわどい露出度満点の悪コス着せて、しっかりザルグルにご奉仕させてやらないとねー」
私はニマニマしながら悪コス姿のイリアナを妄想する。
イリアナはナイスバディのキャラだから、露出度高いコスもしっかり着こなせるのだ。
先日ちゃーんと私がデザインしてあげたからね。
「そっちはどうなの? メイリルはちゃんと堕とせそう?」
『ばっちりだにゃ。メイリルはもう邪神様の忠実なしもべだにゃ』
彩子ちゃんがメイリルの口調を真似る。
猫耳キャラのメイリルは、しっかり語尾に“にゃ”を付けるのよね。
「あははは、いいねー、邪神のしもべのメイリルは。毛皮も黒くなるのかな?」
『当然だにゃ。白い毛皮なんて邪神様のしもべのあたしには似合わないにゃ』
「うんうん、そうだよね~。私もイリアナにはちゃんと黒コス着せてあげる予定だよ」
私は手元においておいたラフスケッチを取り出して眺める。
胸を半分以上出した扇情的な黒コスチューム。
これこそ清楚なイリアナが悪に堕ちたときにふさわしい衣装だと思う。
『もうね、ザルグルには小一時間ぐらいみっちりとお説教しないとね。せっかく洗脳カプセルなんていいものがあるのに、何で野郎しか洗脳しないのかって』
「そうだよねー。中ボス扱いのガルダーンだけ洗脳してってそりゃないよねー」
『きっとザルグルはマッチョな野郎が趣味なんだわ。ガルダーン、お前こそが俺の恋人だー』
「やめてー! 私の中ではザルグルは美形敵キャラなんだからー」
『あははは』
私と彩子ちゃんはしばし楽しい会話を交わす。
今度の冬コミで出す新刊なのだ。
最近出たばかりの格ゲーキャラの二次作品だけど、私は清楚な女性格闘家のイリアナを、彩子ちゃんは猫耳キャラのメイリルを使って、それぞれの悪堕ちを書いて出そうということになったのだ。
最近は悪堕ちってのも広がってきたけど、多くはイリアナ&コウジネタか、サヤカ&ロッキーネタなんだろうなぁ。
中にはサヤカ&イリアナネタってのもあるし、コウジ&ロッキーネタなんてのもあるけど、悪堕ちしたイリアナとラスボスザルグルとのカップリングは多分少ない。
でもさ・・・
正義のヒロインが邪悪に染まるってすごく素敵だと思うのよね。
彩子ちゃんもそういう嗜好の持ち主だったから、私たちはこれまでも悪堕ち本を出してきた。
今回のこれで三冊目。
今回も売れてくれるといいなぁ。
『あ、ごめんごめん、ついつい話し込んじゃったね。それじゃがんばってねー』
「うん、彩子ちゃんもがんばってねー」
私は電話を切ると一息つく。
そして再びパソコンに向かうのだった。
******
「ふわぁ・・・」
私は大きなあくびをしながら学校へ向かう。
夕べは結局夜中までキーボードを叩き詰め。
それでもイリアナの洗脳シーンが書けたから満足満足。
イリアナ可愛かったなぁ。
ザルグル様、イリアナは邪神様とザルグル様の忠実なしもべです・・・なんちゃってさ。
もうあとはエロエロなことさせて邪悪になったところも見せつけて・・・だよね。
「ふわぁ・・・」
「おはよう春っち。眠そうだねー」
教室の席について何度目かのあくびをしていると、美穂(みほ)っちが声をかけてきた。
美穂っちはサークル仲間の一人。
腐女子のお友達ってわけ。
「おはよう美穂っち、夕べはついつい気分が乗っちゃってさ」
「ゲンコー? 進んでるの?」
「まあまあね。今は文章パートをやってて、イラストはラフだけしかできてないけど」
私は主に文字中心。
そこに自分でイラストを入れる形をとっている。
マンガ形式もいいんだけど、私にはそこまでは難しいから。
「そういえばさぁ・・・」
「ん?」
「河和田(かわだ)先輩が行方不明だっての聞いた?」
「えっ?」
私は思わず聞き返す。
「愛梨(あいり)先輩が? だって、愛梨先輩しばらくバイトで忙しいからって・・・」
「それがそうじゃないらしいよ。アパートにも帰ってないんだって。どうしちゃったんだろね。まさか男の人のところとかかな」
美穂っちはどっちかというとスキャンダラスな方向で考えているみたい。
でも、私はサークルで優しくしてくれた愛利先輩を尊敬していたから、行方不明というのがすごく気になった。
******
「ふう・・・疲れたぁ・・・」
学校を終えコンビニのバイトを終え、ようやくうちに帰れるよぅ・・・
はぁ・・・でも、うちに帰れば文字打ちできるよね。
それが楽しみ。
しっかりイリアナには悪事をさせてやんなきゃね・・・
そろそろイラストも手をつけていかないとならないし・・・
それにしても、愛梨先輩が行方不明ってショックだなぁ。
どこへ行っちゃったんだろう。
事件とかに巻き込まれてないといいけどなぁ・・・
あれ?
うちへの通り道の途中、区画整理で更地になっているところに一人の女性が立っていた。
すらっとして姿勢がよく、長い髪をなびかせている。
驚いたことに、その女性は胸と腰回りを覆う白い鎧のようなものを着ており、腰には剣を下げていた。
何かのコスプレかな?
ファンタジーモノだね。
女剣士さんだ、かっこいいな。
私はそんなことを考えながら、更地の脇を通り過ぎようとした。
「こんばんは、春香(はるか)ちゃん」
私はいきなり名前を呼ばれてびっくりした。
「えっ?」
思わず私が振り向くと、白い鎧の女剣士さんが私を見つめている。

「あっ、愛梨先輩? 愛梨先輩じゃないですか。どうしたんですか、こんなところで?」
暗かったので服装しかわからなかったのだが、そこにいたのは愛梨先輩だったのだ。
まさか愛梨先輩がコスプレしてこんなところにいるなんて思わないよね。
「今は詳しいことは言えないわ。でも家に帰ってはだめ。あなたは狙われているの」
「えっ?」
私が狙われている?
それってどういうことなんだろう・・・
それに何で愛梨先輩がそんなことを知っているんだろう?
「狙われているってどういうことですか?」
私は愛梨先輩に聞いてみた。
「・・・言っても理解しづらいと思うんだけど、あなたは普通の人とは違うの。あなたの力を狙っている邪悪な存在があるのよ」
困ったような顔をする愛梨先輩。
はて?
愛梨先輩は確かBL系の方で、ファンタジー系の人ではなかったはずだけど・・・
「あ、もしかして演劇の練習とかですか? その衣装似合ってますよ」
「ち、違うの。違うのよ。私も実は召喚されて・・・」
衣装のことを言われたとたん恥ずかしそうにする愛梨先輩。
うんうん。
ビキニアーマー系は恥ずいよね。
でも、下に白レオタ着ているんだからそうでもないと思うんだけどなぁ。
『ほう、なかなか来ないと思ったら、ここにいたか』
突然声がする。
「えっ? 誰?」
「その声はゲーロウ! まさかこの世界まで?」
愛梨先輩が腰の剣に手を伸ばす。
うわぁ・・・
愛梨先輩役になりきってるなぁ・・・
練習してるんだったら、邪魔しちゃ悪いよね。
「お邪魔しました愛梨先輩。劇の練習がんばってください」
私はそう言ってその場を去ろうとする。
そうだよね。
コスプレしたら気分も乗っちゃうよね。
「あっ、待って! 危ないわ!」
愛梨先輩がそう言った瞬間、私の前に黒い闇が広がっていく。
「えっ? 何?」
「春香ちゃん!」
闇は急速に広がり、私の視界を奪っていく。
足元が無くなり、躰が宙に浮いたような感じになる。
「な、何なの、これ? 先輩、愛梨先輩」
私は手足をばたつかせ、思わず先輩を呼んでいた。
『ククククク・・・さあ、我が元へ来るのだ』
野太い声が闇に響く。
「えっ、いや、ちょっと」
何がなんだかわからないうちに、私の躰は引き込まれるように足元から飲み込まれていった。
******
「あれ?」
気が付くと私は柔らかい毛皮の上に寝かされていた。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたのかな?
締め切り前に意識を失うってのは時々あるけど、今回もそんな感じかな?
周りはなんとなく薄明るい。
岩がむき出しの洞窟のような感じ。
これって・・・
これってもしかして・・・
異世界につれて来られちゃったって感じ?
うひゃー!!
どうしようどうしよう。
キャラにそういう経験させたことは何回かあるけど、いざ自分がそうなるとは思ってなかったよぅ。
なんだかうれしい。
「目が覚めたかな」
ふと声をかけられた。
私が声のした方を向くと、そこには黒いローブをまとった人物が立っていた。
「あ、はい。あなたはいったい?」
「ほう・・・あまり驚いてはおらぬようだな。我が名はゲーロウ。ジャミア神に仕える神官である」
野太い声が響く。
ローブのフードをかぶっているので、あまり顔はわからない。
ローブのフードに目のような模様があるので、その目が私を見ているみたい。
「あ、これでも結構驚いているんですけど・・・なんだかそれ以上にワクワクしちゃって」
私は思わず苦笑する。
だって、家に帰る途中に言ってみれば誘拐されたんだよね。
でも、なんだかワクワクするのは本当なんだもん。
「ワクワク?」
「え、あ、はい。なんか日常と違うからつい・・・」
「クククク・・・変わったやつだ。まあよい。これからはここがお前の部屋だ。お前にはジャミア神に仕える女剣士となってもらおう」
ゆっくりと近づいてくるゲーロウさん。
声からは若いのか年寄りなのかはわからない。
「ジャミア神にお仕えする剣士って言われても、私はごらんの通りのただの短大生ですし、剣なんか使えませんよ」
私は毛皮の上に座りなおしてそう言った。
剣士なんて言われても剣なんて握ったこともないもんね。
「かまわぬ。お前にはふさわしい魔剣を用意してやる。すべては剣に任せるがいい」
うわ、魔剣だって。
やっぱりここは異世界なんだ。
うきゃー!!
すごいよぉ。
私は思わず喜んでしまった。
「あ、あの、魔剣って言いましたけど、聖剣とかじゃないんですか? だって神様に仕えるんでしょ?」
「クククク・・・ジャミア神を知らぬなら無理もないが、ジャミア神は世界に闇を広める暗黒の女神だ。人間どもからは魔女王とも呼ばれておる」
うわぁ・・・悪側なんだ。
もしかしてもしかしてこれって悪堕ち?
私悪堕ちしちゃうの?
「すると私は魔女王様にお仕えするのですか? 人間を滅ぼしちゃう?」
「滅ぼすわけではない。暗黒の闇によって支配するのだ。無論、逆らうものには容赦はせぬがな」
うわぁ、やっぱり。
逆らうものは容赦しないなんてまさに悪のセリフだわぁ。
かっこいいよぉ。
「すると私は魔剣に支配されちゃうんですか? こう、操り人形みたく・・・」
悪堕ちはいいけど、自分の意思がなくなるのはいやだなぁ。
私って寄生派じゃないから、自分の意思は持っていたいのよね。
「む? そうではない。魔剣はあくまでお前に戦いの導きをするだけだ。そのうち躰が戦いを覚えるようになる」
「そうなんですか? よかった」
私はホッとした。
「ククク・・・おかしなやつだ。もっと泣き喚くかと思ったぞ」
「あ、気にしないでください。なんだかちょっと楽しくて」
そうだよねー。
こんな状況楽しんでいるなんておかしいよねー。
でも楽しいんだもん。
「私は洗脳されちゃうんですか?」
これよこれ。
これが一番気になるよ。
洗脳・・・されてみたい気もするし、やっぱりされたくないって気もするしね。
「洗脳? 洗脳とは何だ?」
ゲーロウさんが首をかしげる。
あれ?
洗脳という手段は使わないのかな?
「洗脳というのは、自己の目的に沿うように相手の意思や思考をゆがめちゃうことです。この場合ですと、嫌がる私を無理やりジャミア神のしもべにするような・・・」
「ああ、入信の儀式のことか。ふむ、無論お前自らがジャミア神には仕えたくないというのなら、やはり入信の儀式でおまえ自身にジャミア神への信仰心を植えつけなくてはならぬが・・・」
うーん・・・どうなんだろう、それって洗脳なのかなぁ・・・
「えーと、ジャミア神にお仕えする剣士にするって言いましたけど、戦い方とかは魔剣がサポートしてくれるとして、たとえばですけど、私がジャミア神にお仕えするのはいいけど、生き物を殺したりするのはいやだって言ったらどうするんですか?」
「心配はいらん。ジャミア神の血によって鍛えられた特別な鎧をお前に着せてやる。そうすればお前はジャミア神の闇に心を染められ、破壊と殺戮が好きな魔女となるだろう」
「あ、悪コスがあるんですか?」
私は思わず身を乗り出した。
魔女神の血で鍛えた鎧なんてもう呪いのアイテムそのものじゃない。
それを着せられて魔女になっちゃうなんてもう、悪堕ちそのものだわ。
ああ、その鎧ってどんなのかしら。
「悪コス? 悪コスとは何だ?」
ゲーロウさんがまた首をかしげている。

いけないいけない。
ちゃんと説明してあげないとね。
「えーと、悪コスってのは悪のコスチュームの略で、悪側のキャラが着る衣装のことなんですけど、もともと正義のキャラが悪に染まったときに着せられる衣装のことだったりします」
「正義と悪か。ふむ、お前は我らが悪と考えているのか?」
「あ、ごめんなさい。暗黒の魔女神というので、多分この世界の人間たちの多くは悪と思っているんじゃないかなぁと・・・」
私は自分が思ったことを正直に告げた。
「クククク・・・そのとおりだ。大多数の人間にとって我らは悪。だがそれでいい。闇を恐れる人間は我らを悪と思えばいいのだ。それにしてもおもしろい娘だ。気に入ったぞ」
「あ、ありがとうございます」
私はなんだか気に入ったと言われたことがうれしかった。
「それで・・・もし私がその鎧を着れば、私が私じゃなくなってしまうのでしょうか?」
「うん? どういうことだ? “私が私でなくなる”とは」
もうゲーロウさんも私とのおしゃべりが気にならなくなったのか、壁の出っ張りに腰を乗せて楽な姿勢で立っている。
「やっぱり操り人形みたいに鎧の意のままにされちゃうのかなぁって。それはやっぱりいやだから・・・」
「ククク、わがままな娘よ。安心するがいい。お前の意思は残る。だが、性格は変わるかも知れんな」
意思は残るのか、よかった。
性格は・・・まあ、悪堕ちなんだから当然かな。
うーん・・・私、もう受け入れちゃているのかなぁ・・・
まあ、悪堕ちしてもいいかなって思っているのは事実だよね。
「ククク、どうだ、ジャミア神の血で鍛えられたというその鎧。見てみたいと思わんか?」
「あ、見たいです。見せていただけるんですか?」
私は思わず腰を浮かす。
本物の呪いの鎧を見られるなんてまず無いことだもんね。
「では、ついてくるがいい」
「はい」
私は立ち上がってお尻を払うと、ゲーロウさんのあとに従った。
部屋を出ると薄暗い通路が続いていた。
いくつかの分かれ道があり、その奥に何があるのかはわからない。
私一人なら絶対に迷子になっちゃいそう。
いったいどこへ行くのかな?
「ここだ。一礼して入るがいい」
ゲーロウさんの足が止まる。
通路の正面に広がった大きなホール。
その入り口に私は立っていた。
「はい」
私は言われた通りに一礼してホールに入る。
そして思わず息を飲んだ。
ホールの正面には大きな女性の像があった。
でも、普通の女性じゃない。
口はまさに耳まで裂けたかのように左右に長く、薄く笑いを浮かべている。
目は額にももう一つあって、宝玉でも嵌まっているのか赤く輝き、なんだか私を見つめているよう。
耳は尖り、背中にはコウモリ型の羽根が広がり、胴にはヘビが巻きついている。
胸も性器も晒し、手には胴から伸びるヘビの頭を持っていた。
「これが暗黒の女神ジャミア神様だ」
私の後からゲーロウさんが入ってきて、像に向かってうやうやしく一礼する。
「すごい・・・」
私はただそうつぶやくしかできなかった。
「来るがいい」
「はい」
圧倒された私はただゲーロウさんのあとに続く。
するとゲーロウさんは、ジャミア神の像の近くへと進み、そこに設えてある祭壇のもとへと歩んでいった。
「見よ」
私がそばまで行くと、ゲーロウさんは祭壇の脇にあるものを指し示す。
「これは・・・」
それはいわゆるファンタジーゲームなどに出てくるビキニアーマーだった。
ただ、その色は毒々しく、赤と紫に染められている。
女性の躰をほとんど覆いもしないくせに、アーマーなどと呼ばれている不思議なものだ。
その脇にはひじまでを覆う長手袋とひざ上までのブーツがある。
いずれもビキニアーマー同様に赤く染められ、紫の飾りが付いていた。
「これがジャミア神の血で鍛えられた鎧・・・」
まさにファンタジーゲームやマンガに出てくる悪コスだよぉ。
かっこいい。
でも、ちょっと着るのは恥ずかしいかも。
うう・・・もっとダイエットしておくんだったよぉ・・・
それに胸だってあのビキニアーマーのカップのほうが大きいし・・・
「そうだ。お前はこれを着て、そこにある兜をかぶるのだ。そうすればお前は身も心もジャミア神にふさわしい魔女となる」
私はゲーロウさんの言葉にうれしくなる。
そうよねー。
それこそが悪堕ちだよねー。
身も心もだよねー。
普段自分のキャラに言っているセリフそのままを、まさか言われる日が来るなんて・・・
感激だよー。
ビキニアーマーの脇にある兜はがっしりとしていて大きいものだった。
結構重そうだけど大丈夫かな。
耳の上辺りからは左右に角のような突起が飛び出していて、紫色に輝いている。
額の上の辺りには大きな一つ目の模様があり、さながら第三の眼といった感じ。
これをかぶってしまうことで、きっと私は私じゃなくなる。
でも、かまわない。
あこがれていた悪堕ちを体験できるんだもん。
悪に染まるのってワクワクする。
ああ、ジャミア神様・・・
このような機会を与えてくださり、感謝いたします。
「ククク・・・どうだ? 気に入ったか?」
「・・・ちょっと恥ずかしいです」
私は素直にそういった。
やっぱりビキニアーマーってのは抵抗ある。
でも、それほどいやじゃないかな。
普通は嫌がっているのを無理やり着せられちゃうんだろうな。
「ククク・・・恥ずかしいか。心配はいらん。すぐにそのようなことは気にならなくなる」
「そうなんですか?」
う~・・・そうであってほしいようなほしくないような・・・
まあ、これをずっと着ることになるなら、恥ずかしさを感じないほうがいいのかも・・・
「さて、おとなしくこの鎧を着てもらおうか」
ゲーロウさんがビキニアーマーを指差す。
「あ、はい。・・・あ・・・えと・・・やっぱりいやです」
私はビキニアーマーを手に取ろうと一歩前に出て立ち止まった。
「む? いまさらにして怖気づいたか?」
「あ、いえ、そうじゃないんですけど・・・」
「着たくないと言っても、無理にでも着てもらうが」
「それ、それなんです!」
私は思わず喜んでしまった。
「む?」
「えーと、やっぱりこういうのって無理やり着せてほしいんです。嫌がる女の子に無理やり着せ、嫌がっていた女の子が着せられたことで嫌がらなくなっちゃうみたいな・・・」
「クククク・・・なんだか面倒くさいやつだ。それがお前の好みなのか?」
あはは、やっぱり笑うよね。
ちょっとしたこだわりなんだけどな。
「まあよい。お前の望みどおりにしてやろう。おまえにはこれからしっかりと働いてもらわねばならぬからな」
「あ、いいんですか?」
「うむ。無理やりというのは我も嫌いではないのでな」
うわ、もしかして私が嫌がったのはゲーロウさんにも好都合?
「出よ」
ゲーロウさんがぱちんと指を打ち鳴らす。
するとホールの床から白い影が二体立ち上がり、カチャカチャと学校にある骨格模型のようになっていった。
「うわ、スケルトンですね?」
私はいくつものファンタジーゲームなどに出てきた動く骸骨のことをいう。
実体を見るのは初めて。
ちゃんと骨が動くんだわ。
「ほう、知っているのか? いかにもこれはスケルトン。死者の骨を使った自動人形とも言うべきもの」
「いろいろなゲームとかにでてくるので知ってます。骨なのにちゃんと動くんですね」
「魔力を与えてあるからな。では始めるぞ」
「あ、はい」
なんだか変なの。
無理やり悪コスを着せられるのに、今から始めるぞって・・・
私はちょっと苦笑した。
「いやぁーっ!」
私は思い切り悲鳴を上げる。
左右の腕はスケルトンにがっちり押さえられ、服はびりびりと引き裂かれていく。
あーあ、まあ、安物だしいいか・・・
「いや、いやです。悪コスなんていやー!」
私は精いっぱい抵抗してみる。
スケルトンの力は強く、私の力じゃ振りほどけない。
ああ・・・なんだろう・・・
なんかゾクゾクするよぉ。
私ってもしかして無理やりに弱かったのかな?
スケルトンたちは、私を押さえつけたまま服も靴も靴下も下着までも剥ぎ取っていく。
私は必死で嫌がりつつも、ときどき躰を動かして脱がせやすくしたりした。
すっかり裸になってしまった私は、すごく恥ずかしかったけど、あのビキニアーマーを着るのがとても楽しみでワクワクが止まらない。
「まずはこれからだ」
ゲーロウさんがそう言って腰周りを覆うパンティー部分のアーマーを穿かせてくれる。
普通のパンティーの前側にアーマーが付いていて、左右には薄いベールのような布が垂れているとってもセクシーな感じのもの。
私に似合うのかなとも思うけど、なんだかとても素敵。
次は胸の部分のブラジャー型のアーマー。
大きなカップが私の胸を覆ってくれる。
カップの中で余裕があるのがちょっと悲しいけど、これもやっぱりとても素敵。
身につけると気持ちいいよぉ。
あ、いけないいけない。
ちゃんと嫌がらなくちゃ。
私は悪に染められちゃうんだから。
「いやあっ、助けてぇっ! 悪堕ちなんかしたくない! ましてや悪コスなんて絶対耐えられない!!」
私は首を振って抵抗する。

嘘泣きで涙まで流しちゃったりして。
ホントはうれしいくせにね。
でも、ちゃんと着終わってから喜ばなくちゃ。
ゲーロウさんは私の足にブーツを履かせ、腕には長手袋をはめてくれた。
私は手を握ったり開いたりして手袋の感触を確かめる。
なんだか自分の手そのものみたいですごく素敵だよ。
そして最後は兜。
大きな一つ目の付いた兜。
これをかぶれば私はジャミア神にお仕えする女剣士になる。
もう、胸がどきどきだよ。
すごくうれしいよぉ。
ゲーロウさんがスッと私の頭に兜をかぶせてくれる。
ずしっとした重みが私の首にのしかかる。
でも、なんだかすごくうれしい。
力が湧いてくるみたい。
これこそ私にふさわしい兜なんだわ。
ああ・・・とても気持ちがいい。
なんだか心が冷えていくのがわかる。
うふふ・・・
今までの私がバカみたい。
優しい気持ちなんて不要なものを大事に持っていたなんて。
これからは力がすべて。
気に入らない者は皆殺しにすればいいんだわ。
あはははは・・・
「ふむ、どうかな、気分は?」
「ええ、とてもいい気分よゲーロウ」
私は笑みを浮かべてやる。
同じジャミア神に仕える者同士、これからも仲良くしていかなくてはね。
「それはよかった。魔女剣士ハルカよ」
「うふふ、それが私の名前? 悪くないわね」
私はスケルトンが持ってきた剣を受け取り、腰に下げる。
ジャミア神の念の篭ったこの魔剣。
とても禍々しくていい感じだわ。
「ククク・・・これで女神ゼナーラの手になるものも・・・ハルカよ、その力、存分に振るうがいい」
「クスクス・・・もちろんよ。ジャミア神に歯向かうものは容赦しないわ。世界の全てを暗黒で覆ってやるの。楽しみだわぁ・・・」
私は魔剣を抜き放ち、その黒い刀身を笑いながら眺めていた。
******
「うふふふふ・・・どう、聖騎士アイリ? 触手にズボズボ犯されるのは?」
「あ・・・あふ・・・あはぁ・・・いい・・・いいですぅ・・・」
目の前で快楽にもだえる愛梨先輩。
ううん、今は女神ゼナーラの手駒、聖騎士アイリ。
でも、聖なる鎧を剥ぎ取られ、モンスターの触手に犯される姿はとても聖騎士とは呼べないけどね。
「うふふ・・・お前をそうやって楽しませてくれるのは誰? 女神ゼナーラ? それともこの私かしら?」
「あはぁん・・・ハルカ様・・・漆黒の魔女剣士ハルカ様ですぅ・・・」
腰を振り触手による快楽を余さず受け取ろうとする浅ましいアイリ。
淫蕩に蕩けた顔は淫らそのもの。
もはや快楽のためには何でもするメス犬だ。
「ククク・・・どうかな? 聖騎士のその後の様子は」
ローブ姿のゲーロウが調教部屋にやってくる。
その声はなんだか楽しそう。
「ええ、もう快楽のためなら何でもするメス犬よ。しっかり快楽堕ちさせてやったわ」
「快楽堕ち?」
「快楽に身も心も捧げる状態よ。悪堕ちの一種とも言われるけど、私はそうは思わないわ」
私はちょっとおもしろくない。
どうせならちゃんとした洗脳を施して、聖騎士を邪騎士にしてやりたかったのに・・・
そういった魔法ぐらい用意してほしいものだわ。
「それで、彼女で楽しむつもり?」
「ふむ、それも悪くないが、快楽のために何でもするというなら、ひと働きさせてやったらどうかな?」
ゲーロウがローブの下でほくそえんでいるのがわかる。
「そうね、それも悪くないわね」
私はそう言って、アイリの首につながった鎖を引いた。
「あん・・・」
「うふふ・・・アイリ、もっとしてほしかったら人間の首を十個ほど持ってきなさい。そうしたらもっともっと気持ちよくしてあげる」
「ああ・・・はい、わかりましたハルカ様ぁ」
うっとりと喜びの表情を浮かべるアイリ。
私は意地悪い笑みを浮かべ、アイリを人間たちの元へと戻してやった。

END
変態だー!!
これは悪堕ちなのか…悪堕ちではないのか…読者の判断にお任せしますw
それはともかくハルカに翻弄されるゲーロウが可愛いです。おっさん萌え。
そしてこの堕ちたハルカはいろんな意味で手強そうですねw
たぶんこの後、彩子さんあたり捕まってネコ耳少女コスとかされちゃうんですよ。
舞方雅人様、素敵なSSをありがとうございました。
それではSSは追記からどうぞ↓
『魔女剣士ハルカ』
『クククク・・・このカプセルに入れられたお前は、これより洗礼を受けて我が教団のしもべとなるのだ。ククククク・・・』
『くっ、あなたの思い通りになんかならないわ! 私の中には熱い正義の心があるの。邪教のしもべになどなるものですか!』
くぅ・・・
そうそう、そう簡単には堕ちないって言わせないとねー。
このあとのギャップが際立たないもんね。
私はテキストソフトにキャラのセリフを書き込んでいく。
さあ、ここからよー。
しっかり悪に染まってもらわなきゃねー。
『クククク・・・無駄なことだ。お前にいかに正義の心が燃え盛ろうと、このカプセルによる洗礼を受ければ、お前の心は邪悪な魔女と化し、我が教団のために働くようになるのだ。クックククク・・・』
ローブ姿のザルグルは、カプセルの中のイリアナにそういうと・・・カプセルの脇にある・・・
スイッチを・・・押・・・し・・・た・・・と・・・
キーボードをたたきながら、私はシーンを脳裏に描く。
私の中では、今まさにイリアナを閉じ込めたカプセルが、イリアナに向かって洗脳波を浴びせかける瞬間なのだ。
くぅ・・・
いいよねぇ・・・
洗脳カプセル。
最高だよねぇ。
と、机の横に置いてある携帯電話が鳴る。
あ、彩子(あやこ)ちゃんからだ。
私はすぐに携帯を取り、電話に出た。
『ヤホー、こんばんは。調子はどう?』
「あ、こんばんはー。うん、まあまあだよ。今ちょうどイリアナの洗脳シーン書いてたところ」
『おー! それはそれはいいところだねぇ。しっかり悪堕ちさせてやんなさいねー』
電話の向こうで彩子ちゃんが喜んでる。
彩子ちゃんも悪堕ちが大好きだからねぇ。
「うんうん、当然でしょ。イリアナにはすっごくきわどい露出度満点の悪コス着せて、しっかりザルグルにご奉仕させてやらないとねー」
私はニマニマしながら悪コス姿のイリアナを妄想する。
イリアナはナイスバディのキャラだから、露出度高いコスもしっかり着こなせるのだ。
先日ちゃーんと私がデザインしてあげたからね。
「そっちはどうなの? メイリルはちゃんと堕とせそう?」
『ばっちりだにゃ。メイリルはもう邪神様の忠実なしもべだにゃ』
彩子ちゃんがメイリルの口調を真似る。
猫耳キャラのメイリルは、しっかり語尾に“にゃ”を付けるのよね。
「あははは、いいねー、邪神のしもべのメイリルは。毛皮も黒くなるのかな?」
『当然だにゃ。白い毛皮なんて邪神様のしもべのあたしには似合わないにゃ』
「うんうん、そうだよね~。私もイリアナにはちゃんと黒コス着せてあげる予定だよ」
私は手元においておいたラフスケッチを取り出して眺める。
胸を半分以上出した扇情的な黒コスチューム。
これこそ清楚なイリアナが悪に堕ちたときにふさわしい衣装だと思う。
『もうね、ザルグルには小一時間ぐらいみっちりとお説教しないとね。せっかく洗脳カプセルなんていいものがあるのに、何で野郎しか洗脳しないのかって』
「そうだよねー。中ボス扱いのガルダーンだけ洗脳してってそりゃないよねー」
『きっとザルグルはマッチョな野郎が趣味なんだわ。ガルダーン、お前こそが俺の恋人だー』
「やめてー! 私の中ではザルグルは美形敵キャラなんだからー」
『あははは』
私と彩子ちゃんはしばし楽しい会話を交わす。
今度の冬コミで出す新刊なのだ。
最近出たばかりの格ゲーキャラの二次作品だけど、私は清楚な女性格闘家のイリアナを、彩子ちゃんは猫耳キャラのメイリルを使って、それぞれの悪堕ちを書いて出そうということになったのだ。
最近は悪堕ちってのも広がってきたけど、多くはイリアナ&コウジネタか、サヤカ&ロッキーネタなんだろうなぁ。
中にはサヤカ&イリアナネタってのもあるし、コウジ&ロッキーネタなんてのもあるけど、悪堕ちしたイリアナとラスボスザルグルとのカップリングは多分少ない。
でもさ・・・
正義のヒロインが邪悪に染まるってすごく素敵だと思うのよね。
彩子ちゃんもそういう嗜好の持ち主だったから、私たちはこれまでも悪堕ち本を出してきた。
今回のこれで三冊目。
今回も売れてくれるといいなぁ。
『あ、ごめんごめん、ついつい話し込んじゃったね。それじゃがんばってねー』
「うん、彩子ちゃんもがんばってねー」
私は電話を切ると一息つく。
そして再びパソコンに向かうのだった。
******
「ふわぁ・・・」
私は大きなあくびをしながら学校へ向かう。
夕べは結局夜中までキーボードを叩き詰め。
それでもイリアナの洗脳シーンが書けたから満足満足。
イリアナ可愛かったなぁ。
ザルグル様、イリアナは邪神様とザルグル様の忠実なしもべです・・・なんちゃってさ。
もうあとはエロエロなことさせて邪悪になったところも見せつけて・・・だよね。
「ふわぁ・・・」
「おはよう春っち。眠そうだねー」
教室の席について何度目かのあくびをしていると、美穂(みほ)っちが声をかけてきた。
美穂っちはサークル仲間の一人。
腐女子のお友達ってわけ。
「おはよう美穂っち、夕べはついつい気分が乗っちゃってさ」
「ゲンコー? 進んでるの?」
「まあまあね。今は文章パートをやってて、イラストはラフだけしかできてないけど」
私は主に文字中心。
そこに自分でイラストを入れる形をとっている。
マンガ形式もいいんだけど、私にはそこまでは難しいから。
「そういえばさぁ・・・」
「ん?」
「河和田(かわだ)先輩が行方不明だっての聞いた?」
「えっ?」
私は思わず聞き返す。
「愛梨(あいり)先輩が? だって、愛梨先輩しばらくバイトで忙しいからって・・・」
「それがそうじゃないらしいよ。アパートにも帰ってないんだって。どうしちゃったんだろね。まさか男の人のところとかかな」
美穂っちはどっちかというとスキャンダラスな方向で考えているみたい。
でも、私はサークルで優しくしてくれた愛利先輩を尊敬していたから、行方不明というのがすごく気になった。
******
「ふう・・・疲れたぁ・・・」
学校を終えコンビニのバイトを終え、ようやくうちに帰れるよぅ・・・
はぁ・・・でも、うちに帰れば文字打ちできるよね。
それが楽しみ。
しっかりイリアナには悪事をさせてやんなきゃね・・・
そろそろイラストも手をつけていかないとならないし・・・
それにしても、愛梨先輩が行方不明ってショックだなぁ。
どこへ行っちゃったんだろう。
事件とかに巻き込まれてないといいけどなぁ・・・
あれ?
うちへの通り道の途中、区画整理で更地になっているところに一人の女性が立っていた。
すらっとして姿勢がよく、長い髪をなびかせている。
驚いたことに、その女性は胸と腰回りを覆う白い鎧のようなものを着ており、腰には剣を下げていた。
何かのコスプレかな?
ファンタジーモノだね。
女剣士さんだ、かっこいいな。
私はそんなことを考えながら、更地の脇を通り過ぎようとした。
「こんばんは、春香(はるか)ちゃん」
私はいきなり名前を呼ばれてびっくりした。
「えっ?」
思わず私が振り向くと、白い鎧の女剣士さんが私を見つめている。

「あっ、愛梨先輩? 愛梨先輩じゃないですか。どうしたんですか、こんなところで?」
暗かったので服装しかわからなかったのだが、そこにいたのは愛梨先輩だったのだ。
まさか愛梨先輩がコスプレしてこんなところにいるなんて思わないよね。
「今は詳しいことは言えないわ。でも家に帰ってはだめ。あなたは狙われているの」
「えっ?」
私が狙われている?
それってどういうことなんだろう・・・
それに何で愛梨先輩がそんなことを知っているんだろう?
「狙われているってどういうことですか?」
私は愛梨先輩に聞いてみた。
「・・・言っても理解しづらいと思うんだけど、あなたは普通の人とは違うの。あなたの力を狙っている邪悪な存在があるのよ」
困ったような顔をする愛梨先輩。
はて?
愛梨先輩は確かBL系の方で、ファンタジー系の人ではなかったはずだけど・・・
「あ、もしかして演劇の練習とかですか? その衣装似合ってますよ」
「ち、違うの。違うのよ。私も実は召喚されて・・・」
衣装のことを言われたとたん恥ずかしそうにする愛梨先輩。
うんうん。
ビキニアーマー系は恥ずいよね。
でも、下に白レオタ着ているんだからそうでもないと思うんだけどなぁ。
『ほう、なかなか来ないと思ったら、ここにいたか』
突然声がする。
「えっ? 誰?」
「その声はゲーロウ! まさかこの世界まで?」
愛梨先輩が腰の剣に手を伸ばす。
うわぁ・・・
愛梨先輩役になりきってるなぁ・・・
練習してるんだったら、邪魔しちゃ悪いよね。
「お邪魔しました愛梨先輩。劇の練習がんばってください」
私はそう言ってその場を去ろうとする。
そうだよね。
コスプレしたら気分も乗っちゃうよね。
「あっ、待って! 危ないわ!」
愛梨先輩がそう言った瞬間、私の前に黒い闇が広がっていく。
「えっ? 何?」
「春香ちゃん!」
闇は急速に広がり、私の視界を奪っていく。
足元が無くなり、躰が宙に浮いたような感じになる。
「な、何なの、これ? 先輩、愛梨先輩」
私は手足をばたつかせ、思わず先輩を呼んでいた。
『ククククク・・・さあ、我が元へ来るのだ』
野太い声が闇に響く。
「えっ、いや、ちょっと」
何がなんだかわからないうちに、私の躰は引き込まれるように足元から飲み込まれていった。
******
「あれ?」
気が付くと私は柔らかい毛皮の上に寝かされていた。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたのかな?
締め切り前に意識を失うってのは時々あるけど、今回もそんな感じかな?
周りはなんとなく薄明るい。
岩がむき出しの洞窟のような感じ。
これって・・・
これってもしかして・・・
異世界につれて来られちゃったって感じ?
うひゃー!!
どうしようどうしよう。
キャラにそういう経験させたことは何回かあるけど、いざ自分がそうなるとは思ってなかったよぅ。
なんだかうれしい。
「目が覚めたかな」
ふと声をかけられた。
私が声のした方を向くと、そこには黒いローブをまとった人物が立っていた。
「あ、はい。あなたはいったい?」
「ほう・・・あまり驚いてはおらぬようだな。我が名はゲーロウ。ジャミア神に仕える神官である」
野太い声が響く。
ローブのフードをかぶっているので、あまり顔はわからない。
ローブのフードに目のような模様があるので、その目が私を見ているみたい。
「あ、これでも結構驚いているんですけど・・・なんだかそれ以上にワクワクしちゃって」
私は思わず苦笑する。
だって、家に帰る途中に言ってみれば誘拐されたんだよね。
でも、なんだかワクワクするのは本当なんだもん。
「ワクワク?」
「え、あ、はい。なんか日常と違うからつい・・・」
「クククク・・・変わったやつだ。まあよい。これからはここがお前の部屋だ。お前にはジャミア神に仕える女剣士となってもらおう」
ゆっくりと近づいてくるゲーロウさん。
声からは若いのか年寄りなのかはわからない。
「ジャミア神にお仕えする剣士って言われても、私はごらんの通りのただの短大生ですし、剣なんか使えませんよ」
私は毛皮の上に座りなおしてそう言った。
剣士なんて言われても剣なんて握ったこともないもんね。
「かまわぬ。お前にはふさわしい魔剣を用意してやる。すべては剣に任せるがいい」
うわ、魔剣だって。
やっぱりここは異世界なんだ。
うきゃー!!
すごいよぉ。
私は思わず喜んでしまった。
「あ、あの、魔剣って言いましたけど、聖剣とかじゃないんですか? だって神様に仕えるんでしょ?」
「クククク・・・ジャミア神を知らぬなら無理もないが、ジャミア神は世界に闇を広める暗黒の女神だ。人間どもからは魔女王とも呼ばれておる」
うわぁ・・・悪側なんだ。
もしかしてもしかしてこれって悪堕ち?
私悪堕ちしちゃうの?
「すると私は魔女王様にお仕えするのですか? 人間を滅ぼしちゃう?」
「滅ぼすわけではない。暗黒の闇によって支配するのだ。無論、逆らうものには容赦はせぬがな」
うわぁ、やっぱり。
逆らうものは容赦しないなんてまさに悪のセリフだわぁ。
かっこいいよぉ。
「すると私は魔剣に支配されちゃうんですか? こう、操り人形みたく・・・」
悪堕ちはいいけど、自分の意思がなくなるのはいやだなぁ。
私って寄生派じゃないから、自分の意思は持っていたいのよね。
「む? そうではない。魔剣はあくまでお前に戦いの導きをするだけだ。そのうち躰が戦いを覚えるようになる」
「そうなんですか? よかった」
私はホッとした。
「ククク・・・おかしなやつだ。もっと泣き喚くかと思ったぞ」
「あ、気にしないでください。なんだかちょっと楽しくて」
そうだよねー。
こんな状況楽しんでいるなんておかしいよねー。
でも楽しいんだもん。
「私は洗脳されちゃうんですか?」
これよこれ。
これが一番気になるよ。
洗脳・・・されてみたい気もするし、やっぱりされたくないって気もするしね。
「洗脳? 洗脳とは何だ?」
ゲーロウさんが首をかしげる。
あれ?
洗脳という手段は使わないのかな?
「洗脳というのは、自己の目的に沿うように相手の意思や思考をゆがめちゃうことです。この場合ですと、嫌がる私を無理やりジャミア神のしもべにするような・・・」
「ああ、入信の儀式のことか。ふむ、無論お前自らがジャミア神には仕えたくないというのなら、やはり入信の儀式でおまえ自身にジャミア神への信仰心を植えつけなくてはならぬが・・・」
うーん・・・どうなんだろう、それって洗脳なのかなぁ・・・
「えーと、ジャミア神にお仕えする剣士にするって言いましたけど、戦い方とかは魔剣がサポートしてくれるとして、たとえばですけど、私がジャミア神にお仕えするのはいいけど、生き物を殺したりするのはいやだって言ったらどうするんですか?」
「心配はいらん。ジャミア神の血によって鍛えられた特別な鎧をお前に着せてやる。そうすればお前はジャミア神の闇に心を染められ、破壊と殺戮が好きな魔女となるだろう」
「あ、悪コスがあるんですか?」
私は思わず身を乗り出した。
魔女神の血で鍛えた鎧なんてもう呪いのアイテムそのものじゃない。
それを着せられて魔女になっちゃうなんてもう、悪堕ちそのものだわ。
ああ、その鎧ってどんなのかしら。
「悪コス? 悪コスとは何だ?」
ゲーロウさんがまた首をかしげている。

いけないいけない。
ちゃんと説明してあげないとね。
「えーと、悪コスってのは悪のコスチュームの略で、悪側のキャラが着る衣装のことなんですけど、もともと正義のキャラが悪に染まったときに着せられる衣装のことだったりします」
「正義と悪か。ふむ、お前は我らが悪と考えているのか?」
「あ、ごめんなさい。暗黒の魔女神というので、多分この世界の人間たちの多くは悪と思っているんじゃないかなぁと・・・」
私は自分が思ったことを正直に告げた。
「クククク・・・そのとおりだ。大多数の人間にとって我らは悪。だがそれでいい。闇を恐れる人間は我らを悪と思えばいいのだ。それにしてもおもしろい娘だ。気に入ったぞ」
「あ、ありがとうございます」
私はなんだか気に入ったと言われたことがうれしかった。
「それで・・・もし私がその鎧を着れば、私が私じゃなくなってしまうのでしょうか?」
「うん? どういうことだ? “私が私でなくなる”とは」
もうゲーロウさんも私とのおしゃべりが気にならなくなったのか、壁の出っ張りに腰を乗せて楽な姿勢で立っている。
「やっぱり操り人形みたいに鎧の意のままにされちゃうのかなぁって。それはやっぱりいやだから・・・」
「ククク、わがままな娘よ。安心するがいい。お前の意思は残る。だが、性格は変わるかも知れんな」
意思は残るのか、よかった。
性格は・・・まあ、悪堕ちなんだから当然かな。
うーん・・・私、もう受け入れちゃているのかなぁ・・・
まあ、悪堕ちしてもいいかなって思っているのは事実だよね。
「ククク、どうだ、ジャミア神の血で鍛えられたというその鎧。見てみたいと思わんか?」
「あ、見たいです。見せていただけるんですか?」
私は思わず腰を浮かす。
本物の呪いの鎧を見られるなんてまず無いことだもんね。
「では、ついてくるがいい」
「はい」
私は立ち上がってお尻を払うと、ゲーロウさんのあとに従った。
部屋を出ると薄暗い通路が続いていた。
いくつかの分かれ道があり、その奥に何があるのかはわからない。
私一人なら絶対に迷子になっちゃいそう。
いったいどこへ行くのかな?
「ここだ。一礼して入るがいい」
ゲーロウさんの足が止まる。
通路の正面に広がった大きなホール。
その入り口に私は立っていた。
「はい」
私は言われた通りに一礼してホールに入る。
そして思わず息を飲んだ。
ホールの正面には大きな女性の像があった。
でも、普通の女性じゃない。
口はまさに耳まで裂けたかのように左右に長く、薄く笑いを浮かべている。
目は額にももう一つあって、宝玉でも嵌まっているのか赤く輝き、なんだか私を見つめているよう。
耳は尖り、背中にはコウモリ型の羽根が広がり、胴にはヘビが巻きついている。
胸も性器も晒し、手には胴から伸びるヘビの頭を持っていた。
「これが暗黒の女神ジャミア神様だ」
私の後からゲーロウさんが入ってきて、像に向かってうやうやしく一礼する。
「すごい・・・」
私はただそうつぶやくしかできなかった。
「来るがいい」
「はい」
圧倒された私はただゲーロウさんのあとに続く。
するとゲーロウさんは、ジャミア神の像の近くへと進み、そこに設えてある祭壇のもとへと歩んでいった。
「見よ」
私がそばまで行くと、ゲーロウさんは祭壇の脇にあるものを指し示す。
「これは・・・」
それはいわゆるファンタジーゲームなどに出てくるビキニアーマーだった。
ただ、その色は毒々しく、赤と紫に染められている。
女性の躰をほとんど覆いもしないくせに、アーマーなどと呼ばれている不思議なものだ。
その脇にはひじまでを覆う長手袋とひざ上までのブーツがある。
いずれもビキニアーマー同様に赤く染められ、紫の飾りが付いていた。
「これがジャミア神の血で鍛えられた鎧・・・」
まさにファンタジーゲームやマンガに出てくる悪コスだよぉ。
かっこいい。
でも、ちょっと着るのは恥ずかしいかも。
うう・・・もっとダイエットしておくんだったよぉ・・・
それに胸だってあのビキニアーマーのカップのほうが大きいし・・・
「そうだ。お前はこれを着て、そこにある兜をかぶるのだ。そうすればお前は身も心もジャミア神にふさわしい魔女となる」
私はゲーロウさんの言葉にうれしくなる。
そうよねー。
それこそが悪堕ちだよねー。
身も心もだよねー。
普段自分のキャラに言っているセリフそのままを、まさか言われる日が来るなんて・・・
感激だよー。
ビキニアーマーの脇にある兜はがっしりとしていて大きいものだった。
結構重そうだけど大丈夫かな。
耳の上辺りからは左右に角のような突起が飛び出していて、紫色に輝いている。
額の上の辺りには大きな一つ目の模様があり、さながら第三の眼といった感じ。
これをかぶってしまうことで、きっと私は私じゃなくなる。
でも、かまわない。
あこがれていた悪堕ちを体験できるんだもん。
悪に染まるのってワクワクする。
ああ、ジャミア神様・・・
このような機会を与えてくださり、感謝いたします。
「ククク・・・どうだ? 気に入ったか?」
「・・・ちょっと恥ずかしいです」
私は素直にそういった。
やっぱりビキニアーマーってのは抵抗ある。
でも、それほどいやじゃないかな。
普通は嫌がっているのを無理やり着せられちゃうんだろうな。
「ククク・・・恥ずかしいか。心配はいらん。すぐにそのようなことは気にならなくなる」
「そうなんですか?」
う~・・・そうであってほしいようなほしくないような・・・
まあ、これをずっと着ることになるなら、恥ずかしさを感じないほうがいいのかも・・・
「さて、おとなしくこの鎧を着てもらおうか」
ゲーロウさんがビキニアーマーを指差す。
「あ、はい。・・・あ・・・えと・・・やっぱりいやです」
私はビキニアーマーを手に取ろうと一歩前に出て立ち止まった。
「む? いまさらにして怖気づいたか?」
「あ、いえ、そうじゃないんですけど・・・」
「着たくないと言っても、無理にでも着てもらうが」
「それ、それなんです!」
私は思わず喜んでしまった。
「む?」
「えーと、やっぱりこういうのって無理やり着せてほしいんです。嫌がる女の子に無理やり着せ、嫌がっていた女の子が着せられたことで嫌がらなくなっちゃうみたいな・・・」
「クククク・・・なんだか面倒くさいやつだ。それがお前の好みなのか?」
あはは、やっぱり笑うよね。
ちょっとしたこだわりなんだけどな。
「まあよい。お前の望みどおりにしてやろう。おまえにはこれからしっかりと働いてもらわねばならぬからな」
「あ、いいんですか?」
「うむ。無理やりというのは我も嫌いではないのでな」
うわ、もしかして私が嫌がったのはゲーロウさんにも好都合?
「出よ」
ゲーロウさんがぱちんと指を打ち鳴らす。
するとホールの床から白い影が二体立ち上がり、カチャカチャと学校にある骨格模型のようになっていった。
「うわ、スケルトンですね?」
私はいくつものファンタジーゲームなどに出てきた動く骸骨のことをいう。
実体を見るのは初めて。
ちゃんと骨が動くんだわ。
「ほう、知っているのか? いかにもこれはスケルトン。死者の骨を使った自動人形とも言うべきもの」
「いろいろなゲームとかにでてくるので知ってます。骨なのにちゃんと動くんですね」
「魔力を与えてあるからな。では始めるぞ」
「あ、はい」
なんだか変なの。
無理やり悪コスを着せられるのに、今から始めるぞって・・・
私はちょっと苦笑した。
「いやぁーっ!」
私は思い切り悲鳴を上げる。
左右の腕はスケルトンにがっちり押さえられ、服はびりびりと引き裂かれていく。
あーあ、まあ、安物だしいいか・・・
「いや、いやです。悪コスなんていやー!」
私は精いっぱい抵抗してみる。
スケルトンの力は強く、私の力じゃ振りほどけない。
ああ・・・なんだろう・・・
なんかゾクゾクするよぉ。
私ってもしかして無理やりに弱かったのかな?
スケルトンたちは、私を押さえつけたまま服も靴も靴下も下着までも剥ぎ取っていく。
私は必死で嫌がりつつも、ときどき躰を動かして脱がせやすくしたりした。
すっかり裸になってしまった私は、すごく恥ずかしかったけど、あのビキニアーマーを着るのがとても楽しみでワクワクが止まらない。
「まずはこれからだ」
ゲーロウさんがそう言って腰周りを覆うパンティー部分のアーマーを穿かせてくれる。
普通のパンティーの前側にアーマーが付いていて、左右には薄いベールのような布が垂れているとってもセクシーな感じのもの。
私に似合うのかなとも思うけど、なんだかとても素敵。
次は胸の部分のブラジャー型のアーマー。
大きなカップが私の胸を覆ってくれる。
カップの中で余裕があるのがちょっと悲しいけど、これもやっぱりとても素敵。
身につけると気持ちいいよぉ。
あ、いけないいけない。
ちゃんと嫌がらなくちゃ。
私は悪に染められちゃうんだから。
「いやあっ、助けてぇっ! 悪堕ちなんかしたくない! ましてや悪コスなんて絶対耐えられない!!」
私は首を振って抵抗する。

嘘泣きで涙まで流しちゃったりして。
ホントはうれしいくせにね。
でも、ちゃんと着終わってから喜ばなくちゃ。
ゲーロウさんは私の足にブーツを履かせ、腕には長手袋をはめてくれた。
私は手を握ったり開いたりして手袋の感触を確かめる。
なんだか自分の手そのものみたいですごく素敵だよ。
そして最後は兜。
大きな一つ目の付いた兜。
これをかぶれば私はジャミア神にお仕えする女剣士になる。
もう、胸がどきどきだよ。
すごくうれしいよぉ。
ゲーロウさんがスッと私の頭に兜をかぶせてくれる。
ずしっとした重みが私の首にのしかかる。
でも、なんだかすごくうれしい。
力が湧いてくるみたい。
これこそ私にふさわしい兜なんだわ。
ああ・・・とても気持ちがいい。
なんだか心が冷えていくのがわかる。
うふふ・・・
今までの私がバカみたい。
優しい気持ちなんて不要なものを大事に持っていたなんて。
これからは力がすべて。
気に入らない者は皆殺しにすればいいんだわ。
あはははは・・・
「ふむ、どうかな、気分は?」
「ええ、とてもいい気分よゲーロウ」
私は笑みを浮かべてやる。
同じジャミア神に仕える者同士、これからも仲良くしていかなくてはね。
「それはよかった。魔女剣士ハルカよ」
「うふふ、それが私の名前? 悪くないわね」
私はスケルトンが持ってきた剣を受け取り、腰に下げる。
ジャミア神の念の篭ったこの魔剣。
とても禍々しくていい感じだわ。
「ククク・・・これで女神ゼナーラの手になるものも・・・ハルカよ、その力、存分に振るうがいい」
「クスクス・・・もちろんよ。ジャミア神に歯向かうものは容赦しないわ。世界の全てを暗黒で覆ってやるの。楽しみだわぁ・・・」
私は魔剣を抜き放ち、その黒い刀身を笑いながら眺めていた。
******
「うふふふふ・・・どう、聖騎士アイリ? 触手にズボズボ犯されるのは?」
「あ・・・あふ・・・あはぁ・・・いい・・・いいですぅ・・・」
目の前で快楽にもだえる愛梨先輩。
ううん、今は女神ゼナーラの手駒、聖騎士アイリ。
でも、聖なる鎧を剥ぎ取られ、モンスターの触手に犯される姿はとても聖騎士とは呼べないけどね。
「うふふ・・・お前をそうやって楽しませてくれるのは誰? 女神ゼナーラ? それともこの私かしら?」
「あはぁん・・・ハルカ様・・・漆黒の魔女剣士ハルカ様ですぅ・・・」
腰を振り触手による快楽を余さず受け取ろうとする浅ましいアイリ。
淫蕩に蕩けた顔は淫らそのもの。
もはや快楽のためには何でもするメス犬だ。
「ククク・・・どうかな? 聖騎士のその後の様子は」
ローブ姿のゲーロウが調教部屋にやってくる。
その声はなんだか楽しそう。
「ええ、もう快楽のためなら何でもするメス犬よ。しっかり快楽堕ちさせてやったわ」
「快楽堕ち?」
「快楽に身も心も捧げる状態よ。悪堕ちの一種とも言われるけど、私はそうは思わないわ」
私はちょっとおもしろくない。
どうせならちゃんとした洗脳を施して、聖騎士を邪騎士にしてやりたかったのに・・・
そういった魔法ぐらい用意してほしいものだわ。
「それで、彼女で楽しむつもり?」
「ふむ、それも悪くないが、快楽のために何でもするというなら、ひと働きさせてやったらどうかな?」
ゲーロウがローブの下でほくそえんでいるのがわかる。
「そうね、それも悪くないわね」
私はそう言って、アイリの首につながった鎖を引いた。
「あん・・・」
「うふふ・・・アイリ、もっとしてほしかったら人間の首を十個ほど持ってきなさい。そうしたらもっともっと気持ちよくしてあげる」
「ああ・・・はい、わかりましたハルカ様ぁ」
うっとりと喜びの表情を浮かべるアイリ。
私は意地悪い笑みを浮かべ、アイリを人間たちの元へと戻してやった。

END
変態だー!!
これは悪堕ちなのか…悪堕ちではないのか…読者の判断にお任せしますw
それはともかくハルカに翻弄されるゲーロウが可愛いです。おっさん萌え。
そしてこの堕ちたハルカはいろんな意味で手強そうですねw
たぶんこの後、彩子さんあたり捕まってネコ耳少女コスとかされちゃうんですよ。
舞方雅人様、素敵なSSをありがとうございました。
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